舞台写真でもっとも困るのは照明が暗くて絶対的な光量が足らないためシャッター速度が遅くなり画像がブレてしまうことです。舞台の照明が暗い?と思う方も多いでしょうが、実は想像以上に暗いのです。
ブレには手ブレと被写体ブレがあり、手ブレはカメラ側のブレ、被写体ブレは撮られている人が動くために起こるブレです。
被写体ブレはそのシーンによっては、写真に動きが出て効果的である場合もありますが、手ブレは画像全体がブレてしまうので写真としては使えないものになります。
手ぶれを起こさない方法としては下記のような作戦があるでしょう
- レンズのF値を小さくしシャッター速度を上げる
- 焦点距離の短いレンズを使い被写体にできるだけ近づく
- 三脚を使ってカメラを固定する
- ストロボを使って光量を得る
- ISO感度を上げてシャッター速度を上げる
1.レンズのF値を小さくしシャッター速度を上げる
要するに明るいレンズを使うということで、これができればもっともよい方法でありますがF値を小さくするといっても限界があり、普通のズームレンズはF4〜F5.6程度にしかなりません。それをもっと小さくしたいというのですからF2.8以下が設定できる大口径レンズが必要となり、そのようなレンズは非常に高価で、かつ大きく重たいです。
プロが仕事で撮影するような場合、多少高価でも、大きく重たくても、それが必要な側面もあり、やむ終えないとしても、一般の方にはお勧めしません。シャッターチャンスこそが命の舞台写真で、機動性のない重たいレンズを振り回して2時間のコンサートを手持ちで撮影するのはあまり現実的ではないからです。
2.焦点距離の短いレンズを使い被写体にできるだけ近づく
可能であれば、よい方法です。望遠になればなるほど激しく手ぶれを起こしますので、焦点距離の短いレンズ、すなわち広角レンズや標準レンズで撮れば、多少の手ブレも目立ちはしません。しかし、全景しかとらないのなら別ですが、アップを撮るためには被写体に2メートルぐらいまで近づかないといけません。これは舞台写真ではあまり現実的な方法ではないでしょう。
3.三脚を使ってカメラを固定する
丈夫な三脚を使えば、シャッター速度が遅くても、確かに手ブレはしません(手で持ってないのですから当然です)しかし、被写体が動くことによって起こる被写体ブレは起こります。それに、三脚に固定しているわけですから、著しく機動性が損なわれますので、できれば使いたくありません。
しかしながら、上記したようなの大口径レンズを使うとか、舞台の最後方からの撮影で、大きく重たい400mm以上の超望遠レンズを使わなければならない撮影環境であるならば、これはやむ終えません、三脚を使いましょう。
4.ストロボを使って光量を得る
はっきり言って言語道断です。よく、一般客の方が舞台を撮るのにストロボを使っているのを見ますが、まずストロボ撮影を許可している舞台はほとんどないはずです。それは舞台演出上の妨げ以外の何者でもないからです。仮に許可していたとしても、カメラに内蔵しているような小さなストロボでは被写体まで届きませんし、もし届いても今度は照明効果が写真に写らなくなるので殺風景な写真が出来上がります。特別な理由がない限り舞台のストロボ撮影はやめましょう。
5.ISO感度を上げてシャッター速度を上げる
フィルムカメラなら、高感度のフィルムを買えば済み、デジカメでも設定を高感度にするだけでできる、一番お手軽な方法で、かつ効果的です。
ただし、フィルムでもデジタルでも同様に画像の粒子が粗くなり画質が荒れるという現象が起こります。
一般にISO400程度までなら画質的に大きな問題はありませんが、それ以上になると確かに粒子の荒れが目立つようになります。
デジタルの場合は機種によっても異なりますが、画質に拘るならISO800ぐらいが限度かもしれません。ですが、2L版程度にしかプリントしないのであれば、ISO1600まで上げても、まず問題ないと思います。ブレないことの方が重要です。
結論としては「許容範囲内であれば画像の荒れには目をつぶりISO感度を上げる」これが機動性を損なわずに手ブレを防ぐ唯一の方法です。
ただ、舞台写真の場合、ISO1600まで感度を上げてもシャッター速度が30分の1以下になることがめずらしくありませんので、素人さんには難しい環境であることには違いはありません。
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